栄養コラム
糖尿病と運動療法
2型糖尿病の発症には運動不足が深く関与しています。現在、日本においては食生活が欧米化しており動物性脂質の過剰摂取でエネルギーを摂りすぎる傾向にあります。その上、運動不足が重なるとインスリンの働きが悪くなる、いわゆるインスリン抵抗性を生じてきます。運動はブドウ糖を消費して血糖値を下げたり、インスリン抵抗性の改善が期待できるほか、様々な効果があるため、毎日の生活に積極的に取り入れるようにしましょう。
運動の様々な効果
- 血糖値を下げる
- インスリンの働きがよくなる
- 肥満の解消や予防
- 動脈硬化の進行が抑えられる
- 心肺機能を高める
- 筋委縮や骨粗鬆症の予防
- ストレス解消
- 認知機能の低下を防ぐ など
運動の種類と栄養
運動には有酸素運動とレジスタンス運動の2種類があります。
1.有酸素運動
ウォーキングや自転車、水泳など体で酸素を使い、糖や脂肪を燃焼させる全身運動です。
栄養→食後高血糖改善のためには、食後1~2時間後に運動することがベストですがいつでも、できるときに運動して続けることが大切です。
注意点としては有酸素運動における消費カロリーはとても低いことです。運動を始めたからといって食事摂取量を増やさないようにしてください。
1.レジスタンス運動
ダンベル、スクワット、腹筋など筋肉に負荷をかける動作を繰り返し、筋力アップを図る運動で、基礎代謝が高まることにより普段のエネルギー消費が大きくなります。
栄養→レジスタンス運動は筋蛋白質合成を高め、筋肉量を増やす効果があります。従って運動後は蛋白質食品(肉・魚・卵・大豆食品)を積極的に摂取するよう心掛けてください。また、炭水化物(ご飯・パン・麺類)もあわせて摂ることが大切です。
1.運動の強度と頻度(ウォーキング)
1.強度
適度な運動の強度は「楽である」から「ややきつい」と感じられ、軽く息がはずむ位が効果的です。
2.持続時間
糖質や脂肪が効率よく代謝するには、20分以上継続して運動することが望まれます。
3.頻度
運動の効果は3日間で低下しますので週3日以上は行うようにしましょう。
オーストラリアの研究機関による調査では、世界20カ国の成人を対象とした平日の座位時間を国際比較したところ、日本人成人の座位時間は420分(7時間)で世界最長であることが示されました。新型コロナウィルスの影響により在宅勤務は増加傾向にあり、動かない生活をする方が更に増えているのが現状です。運動不足・摂取栄養過多によるメタボリックシンドロームや、近年では運動不足・摂取栄養不足によるロコモティブシンドロームの注意が叫ばれています。バランスの良い食事をしっかり摂取し、自然の中で風景を堪能しながらのウォーキングや楽しいと思えるスポーツなど、自分にあった、継続可能な運動を探してみましょう。
※ロコモティブシンドローム→加齢に伴い、筋肉・骨・関節に支障をきたし、自立した生活が困難となる状態
管理栄養士 坂田章
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●2023年10月 「糖尿病と健康血管」
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●2023年11月 「腸における栄養療法 」
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